褒めて減らす

イソップ寓話「北風と太陽」

あるとき、北風と太陽が力比べをしようとする。

そこで、旅人の上着を脱がせることができるか、という勝負をすることになった。

はじめに、北風が力いっぱい吹いて上着を吹き飛ばそうとするが、旅人はその寒さのために上着をしっかり押さえてしまい、脱がせることはできなかった。

次に、太陽が日差しを照りつけると、暑さに耐えきれずに上着を脱がせることに成功した。

この寓話で得られる教訓は「冷たく厳しい態度で人を動かそうとしても、かえって人は頑なになるが、暖かく優しい言葉をかけたり、態度を示すと人は自分から行動してくれる、という組織行動学的な視点もうかがえる」(Wikipediaより引用)

悪いことをしたら罰する

その罰を受けたくないから、悪いことはしなくなる(はず)。
この考え方は、「北風の発想」。

公的な法律や条例はもちろん、身近な校則や就業規則などでも、この北風的発想で作られているものは多い。

このような仕組みは、いわゆる「外的要因」として人の行動に影響を与えます。

ブラック企業の「契約を取ってこないと、給料減らすぞ」とか、コロナ対策の「お酒を出したら、ルールを守らない店として公表するぞ」なども、本質的には同じ。

ある程度の効果は見込めるだろうけど、「問題がある」ことが前提となっているため、同じ問題が繰り返し発生し、その度に罰則が厳しくなっていくことが検討されたりする。

良いことをしたら褒める

数年前の話になりますが、スウェーデンの道路でとある実証実験が行われました。

それは、「制限速度内で走行したら、宝くじに自動参加する」というもの。

元ネタ:Speed reduction measures – carrot or stick?

つまり、速度超過の車を取り締まって罰則を与えるのではなく、制限速度を守った車に褒賞を与える、ということ。

この「太陽の発想」による平均速度の減少は、約22%(32km/hから25km/h)。

宝くじ(褒賞)という外的要因はあるものの、速度を抑制するという行為そのものは内的要因によるもの。

そして、北風との大きな違いは「問題そのものをなくす」という点。

内的要因に働きかけることで、自発的な行動を促すことに成功したのです。

飲食店に対する北風と太陽

「要請に従わない飲食店に、過料を支払わせたり、公表したりする」。

ここまで読んでいただけたらお分かりの通り、このような施策では要請に従わない店舗はなくなりません。

むしろ、公表されたお店にお客が殺到するという、なんとも皮肉な結果も。

…であれば、「太陽の発想」に基づき、「要請に従い、しっかりと対策をしているお店を公表する」ことで、優良店として告知され、顧客も安心して外食できるのではないかと思うのです。

今からでも遅くないので、各自治体のみなさま、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。